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ゲノム編集は「大量殺戮」か「自然淘汰」か?

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人間製造機


 

ゲノム編集という技術をご存知だろうか、ゲノム編集とは大まかに説明すると遺伝子をちょいちょいっといじくって好きなように編集してしまう技術である。

このゲノム編集は2003年に完了した「ヒトゲノム計画」というエヴァに出てきそうなカッコイイ名前の”ヒト遺伝子の構造全部見せますスペシャル”によって人間に応用できるレベルにまで達しているのである。

 

人間にこの遺伝子編集技術が応用できるのであればそりゃあもちろんやりたい放題なのだ、人間の”卵”である受精卵を分子バサミでちょいちょいっとやれば「アンジェリーナジョリーの顔にアンハサウェイの体、みちょぱの美しい腹筋」を持ち合わせた絶世の美女や「ウサインボルトの走力にマイクタイソンのパンチ力、はたまたみちょぱの美しい腹筋」を持ち合わせた最強のフィジカルモンスターをまるでゲームのキャラクリエイトのように”編集”できてしまう。

またこういった高スペックキメラ作成だけではなく、”先天性の病気”の対策にもゲノム編集はパワーを発揮する、「両親ともに持病があり子供に遺伝するかもしれない……」そんな時は分子バサミで病気の遺伝情報だけをチョキチョキするだけなのだ。また病気とは少し違うかもしれないが「ハゲ」も対策できる、ハゲ遺伝子をチョキンとしてしまえば良いだけなのだ。

なんてスバラシイんだゲノム編集!スゴすぎるぞゲノム編集!ビバ!ゲノム編集!

 

とまぁこれがいわゆる”デザイナーベイビー”である。

人が人の赤ちゃんを”生まれる前”にあらかじめ”デザイン”しちゃう技術。

しかし最近この技術の是非を問う議論が日夜ニュースサイトを賑わせている、つい先日は中国の大学教授がデザイナーベイビーをマジで誕生させちゃったらしく、「狂っている!」「中国はパンドラの箱を開けてしまった!」等と散々な言われようだがなぜそこまで非難されなくてはいけないのだろうか?その根幹となる理由が「倫理」である。

「倫理」とは何か?「倫理」とは「人として守り行うべき道。善悪・正邪の判断において普遍的な規準となるもの」とネットで調べたら書いてあったが要は「モラル」でいいだろう。

話を聞くだけなら夢のような話でまさに近未来テクノロジー!って感じがするが、頭のどこかで何か嫌に付きまとう”それってちょっとヤベーんじゃねーの?”感を感じなかっただろうか?そこにつまり「倫理」の正体が隠れているのではないか。

 

また、ゲノム編集は格差社会の強化につながる構造的な問題を内包している。

「カネ」の問題だ、ゲノム編集で自分の思い描く理想的なベイビーをデザインしたいのであれば当然そこにはお金が発生する、「分子バサミで遺伝子をクライアントの要望通り編集する」等というブッチギリで最先端で近未来的なテクノロジーを依頼するのであればスゴイ額が必要になるというのは想像に難くない。

この構造が良くない、ヒジョーに良くない、つまりは「金持ちしかデザイナーベイビー作れんよw」ということである、お分かりだろうか?「金持ちの子供は確実に病気の心配もない才色兼備で優秀な子供ですが庶民の子供は知りま千円wまことにすいまメーンw」なのだ、経済的格差が”才能”にまで表面化してくる。

こういった圧倒的不条理の前で上位数%の富裕層からあぶれた庶民は子供を作ろうといった気になるだろうか?また、作ったとしても将来子供から「どうしてもっとカッコよく(可愛く、頭が良く、etc...)産んでくれなかったの?」ならぬ「どうしてもっとカッコよく(可愛く、頭が良く、etc...)デザインしてくれなかったの?」と、”両親に経済力があれば可能であった事実”として告げられることとなるのだ、容姿、知力、体力全てが”どうしようもないこと”から”親の経済力の欠如によって引き起こされたこと”に変わるのだ、人々はブサイクを見るたびに心のどこかでこう確信する(貧乏な家の子供なんだろうなぁ)と。

 

こうして庶民はゲノム編集によって子供を作ることに消極的になる、転じて金持ちはせっせと子供をデザインするようになり、デザインされた子供はデザインされた優秀な子供同士で結ばれ子供をデザインするのだ。この世代交代の「アップデート」によって優秀な人間のみが増え続け、非デザイン製の旧タイプは減り続けていくであろう。

 

近い将来この「デザイナーベイビー」が実用化されたとき、訪れた未来としてのこの一連の流れを”人間の愚かな優生思想と科学崇拝が引き起こした「大量殺戮」”であるか、”ヒトの進化の為の「自然淘汰」”であるかは、まさに「神のみぞ知る」である。

開けた箱がパンドラであるかどうかは開けた時に初めて分かるのだ。